NO22 不動産収入の計上についてA
前回は家賃収入等の計上についてご案内申し上げました。今回は不動産所得の収入の収入で最も質問の
多い敷金・保証金の授受があった場合です。
1.はじめに
不動産賃貸には入居者の入れ替わり。がつきものです。その際、敷金・保証金の授受が行われますが、収入
として、いつ・どれだけ計上すればいいかにはたと困る場合がでてきます。今回はその点について解説します。
2.敷金とは
敷金(保証金ともいいます)とは不動産、特に建物の賃貸借にあたって貸主の債権(未収賃料・修繕費)
を保全するために貸主が預かる金銭をいい、原則は返還すべき性格のものをいいます。これに対し、権利金
とは借地権・借家権の対価の性格を持ち、変換する必要のないものをいいます。(権利金を受け取った場合の
取り扱いは前号をご覧下さい)。ただし、権利金といっても実態は敷金である場合もありますので注意が必要
です。
関西地区ではこの敷金についていて一定割合を変換しない特約をつけることが多く、これを「敷引き」と
いいます。
3.返さなくてもいい金銭が収入です。
さて、入居者が決まり敷金を受け取る場合、その敷金の金額を収入計上しなければならないのでしょうか。
実は敷金受領時の収入計上金額は賃貸借契約書の敷金の条項の内容により、ケース・バイ・ケースとなります。
もっとも計上すべき金額の考え方はいたってシンプルです。要は入居者に対し返す必要がなくなった時にその
返さなくてもよくなった金額を収入として計上すればよいということです。
では次に、敷金の条項例とともに具体的に見ていきましょう。
4.取引の金額が確定している場合
例T
第○条 敷金として40万円を差し入れるものとする。
ただし、敷金金額は返還しないものとする。
例U
第○条 敷金として契約時に40万円差し入れるものとする。
ただし、退去時に30万円を控除した残額を返還するものとする。
この例T・Uが一般的なパターンです。例Tは「全額敷引き」とよくいいます。
この条項によれば、受け取った時点で返還すべき金額がないことが確定しますので、受け取ったときにその
受け取った敷金全額を収入計上すべきことになります。
例Uは「敷引き30万円」といういいかたをします。この場合受け取った時点で返還が不要となる金額30万
円が確定しますので、その返還不要額30万円を収入計上すべきことになります。
この2例で賃貸住宅の契約書のほとんどがカバーされます。ぜひご参考下さい
5.こんな場合は
例V
第○条 敷金として5百万円を差し入れるものとする。
ただし、敷金については1年以内の解約は8割、2年以内は6割、3年以内は4割、4年以内は2割
を控除した金額を返還するものとし、4年超の解約は全額を返還するものとする。
この例は店舗・事務所などの高額の賃貸物件によく見受ける契約内容です。いったん入居したテナントが
すぐには出て行きにくい内容となっています。この場合もあわてる必要はありません。よく読めば返還しな
しなければいけない金額は解約するまでは確定しないことがわかります。したがって、収入に計上しなけれ
ばならない金額は解約にならない限り生じません。そして賃貸開始から4年以内に解約になった場合のみ
解約のときに返還しなかった金額を収入に計上すべきことになります。
例W
第○条 敷金として5百万円を差し入れるものとする。ただし、敷金については1年以内の解約は2割、
2年以内は4割、3年以内は6割、4年以内は6割を控除した金額を返還するものとし、4年超の
解約は返還を要しないものとする。
この例はいかがでしょうか。例Vとは逆に解約までの期間が延びれば敷金の返還が減る契約です。入居
したテナントとしては解約しやすい条件となっています。この場合もよく読めば返還しなければいけない金額
は、賃貸開始から毎年敷金の2割づつ確定していくことがわかります。したがって、収入に計上しなければなら
ない金額も毎年敷金の2割づつの百万円となります。
6.最後に
不動産所得では敷金の取り扱いがよく税務調査の対象となります。また、敷金の金額は大きくなることも
ありますので、十分な注意が必要といえます。
敷金については敷金のうち返さなくてもよい金額を、家主の収入金額に計上することになります。(上記を参照)
したがって、上記例Vのような契約の場合には、解約時点まで返さなくてもいい金額が確定しませんので、解約の期限まで
敷引金の収入金額の計上を遅らせることができます。色々なケースがありますのでまたご相談下さい。 友弘
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